MBA留学雑記帳@オックスフォード

Saïd Business School, University of Oxford

MBAの意義についての不毛な話

これとかこれとかでも話題にされているけど、MBAで学ぶことは役に立つのかという不毛な議論になりがちのテーマがある。なぜ不毛かと言えば、そんなの答えは「人による」でしかないから。だから、この話題にはあまり立ち入りたくないんだけど、現時点で感じていることを少しだけ書いておこうと思う。

この話はごちゃごちゃになりやすいんだけど、「MBAは知識を得る場所か」「MBAで得た知識は仕事で役に立つか」という2つの論点があると思う(ちなみに、他にも論点はあるし、授業が実践的かどうかといったことはここでは脇に置いておく)。

まずは論点その1。よく言われるのは、MBAは知識を得る場所じゃないという話。それよりもリーダーシップのようなソフトスキルであったり、国際的なネットワークを強調する声が最近は目立っていると思う。それらが重要なのは間違いないんだろうけど、ビジネスの知識ってそんなにないがしろにされるべきものなのかなというのが最近の率直な感想。

知識を得る場じゃないという発言を誰がしているのかはよくよく考えるべきだと思う。MBAに来る人のバックグラウンドはそれこそ千差万別。MBAに来る前から戦略コンサルや投資銀行などで働いていた人のなかには、MBAの授業の中身なんてだいたいわかっているというレベルの人もいると思う。一方で、自分を含め、MBAの授業で学ぶような知識をこれまであまりまともに学んでこなかった人もいる。

前者からしてみたら、MBAに知識を期待する意味なんてさらさらないことになる。そして、発信力のある声の大きな人には往々にして前者のタイプが多いのじゃないかと想像。一方で、自分からすると、MBAは新たな知識を得る貴重な機会になっていて、過去の自分がいかに何も知らずに判断していたかを思い知らされるわけで、知識を得ることの価値を軽視するのもどうかと思うようになっている。

続いて、論点その2。これについてはその立場になってなっていないので、現時点ではわからないとしか言いようがない。でも、一つだけ思うことがある。MBAで学んだ知識を仕事で使うことがないとしよう。そのとき、同じ使わないのでも「知ってて使わない」のと「知らなくてできない」のは、現象としては一緒でも全然違うということ。これは、小さい頃から何度も親に言われてきたことだったりする。知ってて使わないのは、今は使う場面ではないという判断の結果。一方、知らなければ、判断も何もあったもんじゃない。たまたまその時点で使わないからと言って意味がないと判断するのはそれこそ意味がない。

そもそも、もしMBAで得る知識が役に立たないんだったら、世の中のビジネス書とかすべて消えてなくなってもいいということになる。でも、それでいいわけがないのだし、結局はMBAで学んだことを使いやすい仕事をしているのかそうでないのかという話でしかないのだ。つまりは、誰が語るかによって答えは変わる。

もちろんMBAで学んだことを適用すればビジネスがうまくいくわけではないし、そもそもMBAで学ぶことは分野によってはかなり浅くてそれだけでは実戦では使えないことも多々あるので、知識を過大評価する気もない。単純に、最近MBAの価値を語る人たちが知識と逆の方向に振れた発言をする傾向が強いので、そんなの人によるっていう当たり前のことを改めて実感してるという話をしたいだけでした。

冬休みの過ごし方

すでに授業が始まった学校も結構あるみたいだけど、うちはまだ冬休み中。12月21日から冬休みに入り、1月12日まで。と思っていたら、Week 0は木曜、金曜にTrinity Term(春学期)の選択科目の説明会があるだけということになったため、実質的に1月15日まで冬休みということになった。

ここまでをどう過ごしていたかというと、試験が終わってすぐにオックスフォードを離れ、1月2日までは日本に。いったんオックスフォードに戻ったけど、その翌日からは4泊ほどイタリア旅行へ。ということで、さっきオックスフォードに帰ってきたところだ。でもさらに、これから2日ほどはのんびりしたあとは、当初の予定にはなかったのだけど、選択科目の説明会前日までロンドンに滞在予定。というのも、妻が日本から訪ねてくることになったので。といった感じで、結局、ほとんどオックスフォードにはいない冬休みということになりそうだ。

とは言え、ただ遊んでばかりいるわけではなくて、そこそこ勉強もしていたりはする。学校からの課題は1つだけ。次学期のGOTOのテーマがビッグデータなので、課題図書が1冊指定されていて、さらにもう1つ、指定の本を読むか映画を観るかしてレポートを書くことになっている(ちなみに、自分は映画「マイノリティ・リポート」を観た)。まあ、レポートというか、150語の感想文だけど。さすがに短いのでこれはもう書き終えた。

あとは、次学期の予習ということで、予備知識を得るために日本語の本をせっせと読んでいる。Hilary Termの授業は以下の通り。

Developing Effective Managers(Core)←要はOrganizational Behavior
Operations Management(Core)
Marketing(Core)
Financial Management(Elective)←要は管理会計
Macroeconomics(Elective)
(それと、GOTO)

Michaelmas TermのFinance 1を受けて心底実感したけど、事前に日本語である程度の予備知識を入れたうえで授業を受けるのとそうでないのでは吸収の度合いが全然違う。まあ、英語力の問題とも言うかもしれないけど。。ともかくHilary TermはMarketing以外はどれも初めて学ぶ科目とあって、マーケティング以外は日本語の本を読んでみている。

そんなこんなで、意外と長かった冬休みもあっという間に終わってしまうんだろうなと思う今日この頃。

クラス・パーティシペーション

MBAと言えばケーススタディー。そして、そのディスカッションでのクラス・パーティシペーションが成績に多大な影響を与える。そんなイメージがあると思う。でもそれ、アメリカのMBAに基づいたイメージで、すべての学校に同じように当てはまるわけではない。

Oxfordの場合、これまで成績には一切クラス・パーティシペーションは反映されなかった。おそらくイギリスのMBAは全般的にそういう傾向があるんじゃないかと思う。もちろん授業中にはディスカッションはあったりするし、発言も求められるんだけど、成績とは関係がなかった。

ただ、Oxfordではここ数年、クラス・パーティシペーションの成績評価への導入が検討されてきて、ついに大学からの承認が得られたとかで、次の学期から一部の授業でクラスパーティシペーションを成績評価に加味することになった。一部というのは、次学期は通常授業が5つあるんだけど、そのうちで必修かつケースベースの授業であるMarketingとOperations Managementで成績の20%ずつがクラス・パーティシペーションになるんだとか。

クラス・パーティシペーションもいい部分、悪い部分あるんだとは思うわけで、みんな積極的に自分の考えや経験をシェアするのはMBAの学びの醍醐味だし、そういう意味では重要なんだと思っている。一方で、成績に関係なくても発言をする人たちはそれなりにいるわけで、成績のために無理矢理する発言がない分、スムーズな議論になるという側面もなきにしもあらずだとは思う。

自分の場合、MBAに来てるんだから積極的に発言しなきゃとは思いつつも、成績というプレッシャーがないこともあり、最初の学期はあまり発言してこなかったというのが正直なところ。でも、成績に反映されるとなれば、特に2科目のうちの1つはMBAの科目のなかでは自分にとって一番なじみがあるマーケティングだし、発言もがんばらなきゃね。(なんと消極的なスタンスだとは思うけど。。)

ちなみに、まだ本格導入初年ということもあるんだと思うけど、クラス・パーティシペーションが成績評価に反映されるのは、最終学期も含めても上記の2科目だけっぽい。この変更が最終的な成績に与えるインパクトに関する説明で学校側が示した数字を考えると、これらの授業以外はこれまで通りという気がする。この辺は今年の結果を見つつ、徐々に変えていくのかな。

Micaelmas Termの振り返り(3)

後述するとおり英語には相当苦労したものの、学期前半は想像してたより忙しくなくて、「あれ、MBAってこんなんだっけ?」とか思ったりもしたけど、課題の締切が立て続けにやってきた後半はそれなりに忙しかった。でも、アメリカのMBAほどはハードじゃないんじゃないかと想像。今学期はケースベースの授業が少なかったし、グループワークの比重もそこまで高くなかったから、まだ自分のペースを保てたかな。一方で、それは学校絡みの活動にかなり選択的に参加していたからでもあったり。今学期は目の前にある、やらなきゃいけないことだけはきちっとこなすという方針だったので、例えばケースコンペだとか、授業とは関係ないものは関わらなかった。

このブログでも何度も書いてしまったけど、グループワークは結構ストレスフルな感じだった。これはどういうグループに割り当てられるかで負荷の度合いが変わるので、運としかいいようがない。いいグループはうちよりもはるかにスムーズに作業をしていたわけで。状況改善の努力をしてもどうにもならない部分は当然あるので、このグループでグループワークに相当な時間を取られるような状況だったら、かなりしんどかったと思うな。

あと、就活関連のイベントも今の自分に役立ちそうなものがあまりなかったのでほとんど参加していない。あ、ベルテルスマンの会社説明会は絶対に参加したかったのに、スケジュールに入れ忘れてスキップしてしまったのは失敗だった。。

【英語】
だいぶ苦労した。自分の英語力のダメさと向き合う日々。IELTSやTOEFLのスコアとかってこっちに来るとまったく関係ないね、やっぱり。たぶん同級生のなかで自分が一番英語できない気がする。インターナショナル比率が今年は96%と猛烈に高いんだけど、ネイティブじゃなくても英語圏の大学を出てたり、英語圏で働いてたりする人が大半なので、みんな英語ができるのは当たり前。英語が微妙なのは一部のアジア人くらいっぽい。

一番苦労してるのはリスニング。授業は教授が比較的ゆっくりしゃべるからなんとかなるだろうと思ってたけど、人によっては早口で授業をするから(Finance 1のAlanとか)、予習してなかったら撃沈するであろう授業もあった。同級生との会話も人によるんだけど、なんだかんだみんな英語が達者なのと、いろいろな国籍の人がいてアクセントが多様で、聞き取れないことも多い。最後のほうは多少は慣れた気もするけど、まだまだ全然ダメ。しゃべるのは1mmも進歩した気がしない。。。この辺は性格上、そんなにしゃべるタイプではないのもいけないんだよね。ライティングは一度、教授からのレポートのフィードバックで「英語なんとかしようね」と言われたけど、どうにもならないので気にしないことに。リーディングはそれなりになんとかなっているかな。

で、英語力改善のための努力はしてまして、スピーキングに関してはしゃべる量の少なさを補うために、なるべく毎日のようにスカイプ英会話をやっている。まさかこっちに来てからここまで頻繁にスカイプ英会話をするとは。リスニングは学期前半はドラマを見たりとかしてたけど、忙しくなった後半はそれも続かなかったのが反省。それと、大学のランゲージセンターの授業も1コマ取っていた。グループワークとのかぶりとかで半欠席も多かったけど。英語力向上の努力は次学期以降も継続していきたい。

【ソーシャル】
人見知りだったり、コミュ障の気がある自分としては、基本的にパーティーみたいなものが苦手だし、人づきあいって結構めんどうに感じちゃうんだよね。。OxfordのMBAはいわゆるパーティースクールとは違うんだけど、MBAとか関係なしに大学自体の伝統としてカレッジディナーというのがあって、各カレッジごとに週に2〜3回はダイニングホールでフォーマルディナーが催されている。これはチケットを購入して参加するもので(人気は高いのでチケットはわりとすぐに売り切れることも)、別のカレッジだったり学外の人もゲストとして呼べる仕組みになっている。学生は友人をそれぞれのカレッジに招待し合ったりもしていて、Oxfordではこれが学期中に一番多いイベントごと。自分は今学期は他のカレッジのディナーに1回行っただけ。来学期はこういうのももう少しがんばらないとかなあ。

MBA以外の学校関係】
自分がOxfordを選んだ最大の理由でもあるけど、ビジネススクール外での学びの機会にはとても恵まれていて、すごくいい環境だと思う。当然と言えば当然なんだけど、MBAに来るとみんなビジネスにフォーカスした活動をしがち。でも、これは自分がメディアで働いてきたからかもだけど、将来につながるのは何もビジネスに関する学びだけとは限らないと思っている。その点、Oxfordのブランド力と総合大学としての魅力ということになるわけだけど、著名人の講演イベントはたくさんあるし、他の学部のイベントもおもしろいものがたくさんある。ただ、この点もリスニング力の低さが暗い影を落とす部分で、もっと聞き取れるようになるといいんだけどね。

【まとめ】
選択的に活動していたわりには、精神的にいっぱいいっぱい感を感じてしまっていて、自分のキャパの少なさに悲しくなった学期だった。MBAに来るとアグレッシブにいろいろなことに挑戦している人たちが多い。またとない機会なんだし、いろいろなことにチャレンジしなきゃと焦る一方で、自分の現在地をすごく考えさせられた。自分にとっては目の前にあることをきちっとこなすこと自体もチャレンジだし、他人と同じように行動する必要はないというのが冷静な結論。もちろん自分にとってどうするのがプラスになるのかは常に考えながら行動していきたい。英語力が向上してくるともう少し余裕をもっていろんなことができるようになるんだろうけど、そんなことも言ってられないからがんばろう。

Micaelmas Termの振り返り(2)

Micaelmas Termの授業の振り返りの続き。

【Finance 1】
ファイナンスの基本的な項目を一通りカバーした授業。ファイナンスのファの字も知らなかった自分としては結構びびってたわけだけど、内容的には着いていけた気がする。それもこれも事前に繰り返し読んだ『道具としてのファイナンス』『あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座』のおかげな気がする。それなしに臨むとそれなりに苦労したと思う。しかも、教授の英語がわりと早口というのが辛かった。この授業は月曜の朝にあって、MBAでの初めての授業がこのFinance 1だったんだけど、英語の聞き取れなさに唖然としたのを覚えている。聞き取りに関しては、その後多少は慣れたものの、最後まで苦労したなあ。ちなみに、試験の過去問のモデルアンサーに「Textbook stuff」という言葉だけ書いて解説が省かれることが多々あったため、「どこにそんなMagic textbookがあるんだ!」「試験の回答にTextbook stuffと書けばいいんじゃないか」などと話題になり、この「Textbook stuff」が試験前の流行語になっていた。

【Strategy】
ストラテジーの基本的なフレームワークについて学ぶ科目。2人の教授が前半4週と後半4週で授業を分担してたんだけど、授業の進め方が対照的だった。基本的にはどちらもケースの予習が課されてるんだけど、そのケースについてディスカッションするわけではないのが不思議なところ。授業のかなりの部分はフレームワークについての講義。で、最後に毎週2つのスタディーグループがケースについてのプレゼンをすることになっていて、でもそれ以上の突っ込んだ議論はあまりしなかったんだよね。ただ、後半になって教授が替わってからは少しスタイルに変更が。どうも前半の授業の評判がよくなくて学生側から注文があったらしい。後半は授業中に短いケースが配られて、そのディスカッションが行われたりして、よりインタラクティブな構成に変わった。MBAっぽい授業をすればいいってもんじゃないとは思ってるんだけど、ストラテジーの授業としてはやや拍子抜けな感じ。

【GOTO】
オックスフォードらしいチュートリアルの仕組みをMBA生にもという発想だと思われるこのプロジェクト。今学期はDemographic changeをテーマに行われた。学生が6人1グループになり、各グループに教員が割り当てられて2週間に1回、チュートリアルが行われる。正直なところ、コンセプトは悪いとは言わないけど、効果的なプロジェクトになっているかというと疑問が。なにしろ教員陣もほとんどの人はこのテーマと無関係で、実質的に学生と一緒に勉強してる状況だと思われる。そして、このプロジェクト自体に対する熱の入れ方もたぶん人それぞれ。2週間に1回、チュートリアル前に課されるレポートの形式も担当教員によって少し違うのはどうかと思う。などと、評価はいまひとつという感じだけど、人口変動の経済的、ビジネス的影響についてまじめに調べたり、考えたりすることってなかったから、それはそれでいい機会だった。特に日本みたいに高齢化が進んでいる国でのシニアビジネスについて勉強できたのはよかったかな。来学期はビッグデータがテーマ。

あとは全般的な総括をまた次回。