MBA留学雑記帳@オックスフォード

Saïd Business School, University of Oxford

Why MBA?(1)

MBA受験をすると、エッセイでもインタビューでも必ず聞かれることになるのが「Why MBA?」という質問。いろんな人のブログや「こうすれば受かるMBA」なんかを見ても、かっこいいことが書いてあって、みんな意識高いなあと思うわけだけど、MBAに行く人、行った人と実際に話すと、きっかけは案外ゆるゆるで、外向けに話をきれいにまとめていることも多い。要は本音と建前。別にそれはそれでいいと思っていて、その両方があることを前提に話を聞かないといけないなと思うわけです。

ということで、今さらだけど自分の「Why MBA?」の話をしてみる(ちなみに、上述のようなものなので、「Why MBA?」の答えは受験の過程で少しずつ姿が変わっていくようなものでもある)。

 
自分は大学時代の専攻がメディアだし、仕事もずっとメディアビジネスに携わってきた。単純にメディアの仕事が好きだ。そして、このところのメディア業界に起こっている大きな変化と言えば、やっぱりデジタル化だ。メディアのデジタル化が進行するなかで、自分が長く関わってきた雑誌もデジタル化の取り組みがなされ、最近は電子雑誌的なものもだいぶ増えた。でも、それって雑誌の進化として正しいのかと言うと、違うよねと思っている。もしくは、それが正解とは限らないと言ったほうがいいのかもしれない。

例えば、料理というカテゴリ。『オレンジページ』や『きょうの料理』などの雑誌が長いこと人気を得てきた。一方、デジタルの世界では、クックパッドが圧倒的な存在感を築いている。ユーザーからしてみれば、別に雑誌の体裁である必要なんてなくて、むしろクックパッドのほうが便利で目的にかなっている。だって、レシピを見るのが一番の目的なのだから。

以前は、継続的に情報提供する手段として、雑誌という容れ物しか選択しようがなかった。ところが、デジタル、特にウェブの登場で状況が変わった。要はメディアの最適化が行われていると思っている。これまでアナログの形で提供してきたものを、デジタルの世界で提供しようと考えたら、そこに最適な形に設計し直す必要があるのだ(これはトラディショナル・メディア基準での言い方だけど)。

つまり、するべきは、メディアをデジタル化することではなくて、メディアが提供してきた価値をデジタル化すること。その際に、それまでとは根本的にビジネスモデルが変わることがありうる。と言うか、たいていの場合は変わると思う。ま、それがビジネスとしておいしいかというと、また話は別だったりもするんだけど。

ということは、結局、メディアの最適化が進むなかで行われること、必要になるスキルというのは、新規事業開発ということになってくる。じゃあ、新しいビジネスを作るのに十分な力が自分にあるかと言えば、あやしいかもと。実際、3年ほど、とある新規事業の担当(その事業のほとんどを社員としてはほぼ一人で切り盛りする立場)をやってきたが、どうしても自分の力不足を感じざるをえなかった(努力不足の面も否定できないんだけどね。。。)。出版社という性格上、そういう分野に明るく、鍛えてくれる上司や先輩も少なく、かなり自助努力でやっていたわけで、そんな環境で自分の力を伸ばすことの限界も感じていた。

ではどうするかと考えた際に、選択肢の一つにMBAがあり、最終的にそれを選択したことになる。だから、新規事業開発に必要な力の強化をMBAでできたらいいという思いが、自分がエッセイやインタビューで答えていたWhy MBA?の骨格を成している。

じゃあ、本当にMBAで上記のような力がつけられると思っているかと言えば、そこまで無邪気に期待を持っているわけではなかったりするというのが、ちょっとややこしいところなんだけどね。現時点では、知識を得ることがMBAの最大の効用とは思っていない。

今まで見たなかで一番納得感のあるMBAの意義についての話は古賀洋吉さんの「MBAは決断の訓練をする場」とするブログエントリMBAでのそうした経験が、その後の仕事に生きてくれればいいかなくらいに考えている。

そんなわけで、結構長くなってきたので、もう少しゆるっとしたWhy MBA?の話をまた次回。